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特別リポート:GEの新たな「選択と集中」、デジタル挽回狙う
2017年9月1日 / 05:01 / 3ヶ月後

特別リポート:GEの新たな「選択と集中」、デジタル挽回狙う

[ニューヨーク 28日 ロイター] - 米大手複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)は、今月就任したジョン・フラナリー最高経営責任者(CEO)の下で、産業用ソフトウェア事業におけるコスト削減や利益拡大を来年実現したいと考えており、他社との提携拡大や株式一部売却も検討している。

 8月28日、米大手複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)は、今月就任したジョン・フラナリーCEOの下で、産業用ソフトウェア事業におけるコスト削減や利益拡大を来年実現したいと考えており、他社との提携拡大や株式一部売却も検討している。写真は同社ロゴ。ニューヨーク証券取引所で2016年6月撮影(2017年 ロイター/Brendan McDermid)

この部門に詳しい関係者が明らかにした。

ジェフリー・イメルト前CEOは6年間の歳月と40億ドル(約4400億円)超のコストを投じて、創業125年のGEを「デジタル・インダストリアル・カンパニー」へと変貌させようとしていた。

だが、タービンやエレベーターなどの産業機器にコンピューターを接続し、故障予知や運用コスト削減を可能とする「プレディクス」と呼ばれる情報ソフトウェア基盤は、技術上の問題を抱えており、その事業スケジュールに遅れが出ていた。

──関連記事:GEが大規模な人員削減へ、テクノロジー部門で採用凍結

GEは今春、これまで報告されていなかったプレディクスの問題に対処するため、2ケ月におよぶ異例の「一時中断」を宣言。修復が軌道に乗れば、同社は今後、エネルギー、航空、石油・ガス産業の既存顧客に対する営業活動に注力しつつ、他セクターの新規顧客開拓は縮小していくことになる、と上級幹部3人がロイターに語った。

「収益の伸びが最も速い市場にリソースを投入する」とGEデジタルのビル・ルーCEOはインタビューで語った。

また、プレディクスに対する投資家の理解を深めるため、デジタル部門の収益計上を見直し、ガス火力発電所関連ハードウェアによる30億ドルを除外することで、「純粋な」ソフトウェア事業状況を明確にし、二重計上を避けるようにした、とGEのジェフ・ボーンスタイン最高財務責任者(CFO)は語った。

2020年までのGEのデジタル事業の収益は、これまでの定義では150億ドルと予想されていたが、この見直しにより、120億ドルに修正された。昨年のGEの総収益は1240億ドル近くだった。

この変更はGEデジタルにとって、重要な針路修正となる。

同事業部はこれまでのところ投資家が期待するような収益を実現しておらず、今年に入ってGEの株価が25%低下し、ほぼ2年ぶりの安値を記録した一因となっている。

すべてのモノをインターネットでつなげる「IoT」時代が到来するなか、GEは、産業用インターネット市場規模が2020年に2250億ドルに達すると推測している。

8月1日に就任したフラナリーCEOは、この市場で主要プレイヤーになるとの、イメルト前CEOのビジョンを支持している、と現CEOの考えをよく知る2人の関係者は語った。

だが、財務面での手腕と厳しい意志決定で知られる55歳の新リーダーは、GEデジタルに対し、来年にもコスト削減と利益拡大を強く求める可能性が高い。また、フラナリーCEOは、GEデジタルの経営手法を再構築し、より多くの企業と提携し、同事業部の少数株式を売却する可能性もある、と上記の関係者2人は明らかにした。

「プレディクスには巨額の投資を行った」と財務担当者としてフラナリー氏と共に働いていたGEの元上級幹部は語る。「もっと統制を厳しくして、利益を確保しようとしている」

フラナリー氏の計画について、GEはコメントを拒んでいる。

<歯止めのない出費>

イメルト前CEOは10年近く前、産業用インターネットブームにいち早く気が付いた企業リーダーの1人であり、その波に乗れるようGEを導くことが、16年にわたるイメルト体制を象徴する戦略的な取り組みとなった。

GEがデジタル関係投資を強化する際、イメルト氏は「これは総合的・包括的な変化だ」と昨年語った。

プレディクスは相当規模の売上高や利益をもたらす可能性があるとアナリストや投資家は考えている。すでに米電力持ち株会社エクセロン(EXC.N)やスイスのエレベーター製造シンドラー(SCHP.S)といった大口顧客を獲得しており、受注額は今年上半期に23億ドルと、24%増加した。

一方で、プレディクス事業は当初の期待よりも成熟に時間がかかっており、2020年までに120億ドルというGEの目標を達成するには、現在の成長ペースは遅すぎるという声もある。またイメルト時代に膨らんだコストも、利益を圧迫している。

資産運用会社ウィリアム・ブレアでアナリストを務めるニック・ヘイマン氏は、イメルト前CEOについて、「ビル・ルー氏に限度のない白紙小切手を渡してしまった」と批判する。

例を挙げよう。GEはデジタル事業支出として今年は7億ドル多く予算計上しており、金額は計21億ドルに達する。これはプレディクスとそのアプリケーションのさらなる開発に加え、売上高拡大に向けた取り組みに充てられる。GE幹部は、これがデジタル事業投資のピークになる可能性が高いと指摘する。

プレディクスの契約更新が重なることで「時間の経過とともに相当の収益が積み上がる」ため、2020年の収益目標の達成は視野に入っている、とGEデジタルのコゼマ・シップチャンドラーCFOは語る。

<プレディクスの改善>

 8月28日、米大手複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)は、今月就任したジョン・フラナリーCEO(写真)の下で、産業用ソフトウェア事業におけるコスト削減や利益拡大を来年実現したいと考えており、他社との提携拡大や株式一部売却も検討している。同社が6月提供(2017年 ロイター)

イメルト前CEOのもとで、GEは他社に先駆けてデジタル事業に進出した。だが、その戦略を進めていくなかで、初期のいくつかの不手際により時間と資金を浪費してしまった。

エンジニアたちは当初、「プレディクス・クラウド」の拠点となるデータセンターの構築を提言していた。だが、アマゾン(AMZN.O)とマイクロソフト(MSFT.O)が数百億ドルを投じてそれぞれのクラウドサービスである「AWS」と「アジュール」のためのデータセンターを構築すると、GEは方針変更を余儀なくされた。

「われわれはこの種の投資では太刀打ちできない」とルーCEOは語る。

GEは1年前に自社単独でのクラウド戦略を放棄。現在、GEはアマゾンのAWSを利用しており、幹部によれば、予定より4カ月遅れているものの、10月末までにはアジュール利用も開始するという。

データセンター構築を諦めたことで、GEエンジニアはアプリケーションに専念した。同社経営陣は今や、プラットホーム単独よりアプリケーション開発を伴う方がビジネス拡大するのうえで有益であり、収益性も高いと考えている。

「恐らくそれが、われわれの学んだ最大の教訓だ」とルーCEOは語る。

またGEは、これまでの伝統的資産をプレディクスという情報基盤に合わせて調整するという課題にも直面している。

GEには自社製機器を監視するための多くのアルゴリズムがあったが、大半は別々のプログラム言語で書かれたものであり、傘下事業が抱える別のシステム上で動いていた。これらのアルゴリズムをプレディクスに移植するため、さらに時間を浪費することになった、と関係者は語る。

過去10カ月にメリディウム、サービスマックス両社を買収したことにより、GEは知名度の高いアプリケーションを手中に収め、デジタル事業の年間収益は約1億5000万ドル増大した。だが、こうした新たな製品が加わったことで、「プレディクス」上で動かすために移植すべきコードがさらに増えてしまった、と関係者は語る。

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その結果、ソフトウェア導入に要する時間が時折予想よりもはるかに長くなり、コード上のバグや、アプリケーションに顧客が望んだ仕様が欠如するなどの状況が生じたという。

GE幹部は、プレディクスが技術的な問題を抱えており、いくつかの目標達成が予定よりも遅れていることを認めている。5月と6月の「一時中断」期間中にGEのプログラマーたちがプレディクスの安定性を向上させたという。

戦略の変更と合わせて、経営陣にも変化が生じた。

プレディクスの担当主任ハレル・コデシュ氏とGEデジタルのチーフ・コマーシャル・オフィサー、ケイト・ジョンソン氏は、いずれも今年GEを離れた。プレディクス改良のための「一時中断」を宣言したのは、コデシュ氏の跡を継いだパトリック・フランクリン氏である。

「(経営陣は)事業とともに進化する」とルーCEOは述べ、GEにはプレディクスの成長維持に向けた適切な人材が揃っていると語る。

<ライバル企業の標的に>

競合他社も手をこまねいているわけではない。独シーメンス(SIEGn.DE)などの大手ライバルや多数の身軽なスタートアップ企業が、エネルギー、航空、鉄道、医療、石油・ガスといったGEの主力分野で市場シェアを獲得しようと急追している。

シカゴに本拠を置くスタートアップ企業アップテイクは3月、バークシャー・ハザウェイ・エナジー(BRKa.N)の関連企業と、GE製を含む数千基の風力発電用タービンの分析を提供する契約を結んだ。

カリフォルニア州レッドウッドシティをベースとするC3IoTは、昨年、やはりGE顧客である仏公益企業エンジー(ENGIE.PA)との契約を獲得。その後エンジーは、GEとデジタル提携契約に調印した。

水圧破砕用ポンプなどの設備を製造するスチュワート・アンド・スティーブンソンは、2015年にプレディクスについてGEと会合を持ったが、すぐに契約を見送ることを決めた。

「わが社の顧客のニーズに合うよう、カスタマイズできないように思えた」と同社の最高技術責任者クリス・ハーベル氏は語る。「もしGEがカスタマイズできるよう開発を進めるとしても、結局かなりの金額を取られることになりそうだ」

スチュワート・アンド・スティーブンソンは、2012年に創業した、ヒューストンにある従業員100人規模のスタートアップ企業Fluturaのサービスを試験的に使ってみることにした。規模の点でGEに劣るものの、同社はカスタマイズしたプログラムを簡単に作ってくれる能力がある、とハーベル氏は語る。

GEデジタルのルーCEOは、どんな案件においてもライバルと競合するが、多くのスタートアップ企業は真のライバルではない、と断じる。プレディクスには独自のアプリケーションがあり、グローバルに展開できるからだ。「これだけの能力を持つプラットホームは、競合他社には存在しない」

GE内部では、経営陣は引き続き強気姿勢を崩していない。

GEが昨年買収した人工知能開発企業ワイズ・アイオーの共同創業者で最高技術責任者を務めるジョシュア・ブルーム氏は、GEがプレディクス開発に注力し、顧客の獲得を続けていけば、このソフトはかなりの利益をもたらすだろうと語る。

とはいえ、ブルーム氏は「開発の方向を誤らず、大規模に展開するのは大きな挑戦だ」と付け加えた。

(翻訳:エァクレーレン)

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