
10月27日、第50回衆議院選挙は27日夜に締め切られ、日本テレビや朝日新聞など国内メディアの予測によると、自民・公明合わせた連立与党で過半数を割り込む見通しとなった。 都内の開票所で同日撮影(2024年 ロイター/Manami Yamada)
[27日 ロイター] - 第50回衆議院選挙は27日夜に締め切られ、自民・公明合わせた連立与党で過半数を割り込んだ。
専門家や市場関係者に見方を聞いた。
◎財政は拡張的、利上げは困難
<野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏>
自民・公明が「裏金議員」公認などで何らかの形で過半数を獲得できるのか、あるいは大敗で少数与党を免れないのか、現時点では不透明だ。前者は金融市場がある程度織り込んでいるだろう。経済政策的には拡張的な財政出動の可能性が高まる。金融正常化、利上げなどは難しいだろう。
後者の場合は内閣不信認の頻発などで内閣総辞職や衆院解散を迫られる可能性が高まり、政権運営は非常に困難になる。さらに与党が大敗し、立憲民主党主導の政権となる場合、金融市場は不確実性の高まりで円高株安の大混乱となるだろう。
金融政策については立憲民主党は正常化を主張しており、リスクオフの円高に、利上げなどによる円高要因も加わりそうだ。
◎まず株安で反応、連立の枠組みが今後の焦点
<みずほリサーチ&テクノロジーズ 主席エコノミスト 酒井才介氏>
想像以上に与党に厳しい判断が示された。与党過半数割れはある程度マーケットで織り込まれていたが、追加公認などで与党の枠組みを維持できないほどの負け幅は想定以上だろう。政権の不確実性が高まり、あす以降、海外投資家を中心に売られ、まずは株安で反応するとみられる。
今後は、連立の枠組みをどう維持していくかにマーケットの焦点が移る。今回20議席を上回る勢いで伸ばした国民民主党は、経済政策ではアベノミクス継承・大規模金融緩和の維持路線で与党と近く、手を組む可能性が意識されている。
財政政策は、与党敗北だけでも経済対策の規模が膨らむことが予想されており、歳出拡大路線の国民民主が連立入りすればさらに規模が拡大し、補正予算も20兆円以上の規模になる可能性が高くなる。消費税減税のハードルは高いが、増税の実施も当面難しくなるだろう。金融政策も緩和が続く。こうしたことが意識され、選挙後、次第に円安・株高に持ち直すかもしれない。
来月の米大統領選挙次第というところもあるが、円安が150円台後半、160円台まで進んでくると、今度は政府の為替介入や、日銀に対する政治サイドからの利上げ容認論が高まり、12月利上げの可能性が意識されるようになる。
◎これほどの大敗、党内だれも想定せず
<愛知学院大 森正教授(政治学)>
自公が裏金議員を公認しても過半数には満たないだろう。当然石破茂首相の責任論が出てくるだろうが、就任して間もない段階で辞任する動きになるかどうかが焦点。
選挙の責任者である森山裕幹事長の責任問題は必ず浮上するだろう。落選した閣僚の後任人事も含め、第二次石破内閣は党内融和的な人事を行い、野党協力を仰ぎながら年内に補正予算を通すことになるだろう。物価対策と能登支援がメインの補正予算は野党協力を仰ぎやすいだろう。
問題は来年で、7月の参院選を控え2025年度予算が通過する3月以降は選挙の顔が石破氏でいいのかとの議論が浮上する可能性がある。
今週石破首相が退陣するかどうか、そもそも自民がこれほど大敗すると党内で想像できた人はいないので、ポスト石破政権の絵を描けている人はあまりいないのではないか。
自公が過半数を割り込み少数与党となっても、来年の参院選を控えて国民民主党などと連立するのは簡単ではない。重要な経済政策については民主党の野田佳彦政権のように主要な与野党で協議する可能性もあるのではないか。
国民民主党の主張する消費税減税などは議論の俎上に乗る可能性がある。防衛増税などは難しく拡張的な財政政策になるだろう。
立民や石破氏が主張するアベノミクスからの見直し、金融緩和の見直しも、「見直し」を口にするだけで株が下がるわけで、難しいだろう。
アジア版NATO(北大西洋条約機構)や日米地位協定の改定など石破カラーの外交・安保政策も党内でまとめることはできず無理だろう。
◎自民の情勢予想通り、立民政権の可能性ない
<日本大学名誉教授 岩井奉信氏>
自民党は情勢が厳しいと言われていたが、予想通りになった。考えが近い国民民主などと連立を組まないまでも、協力関係は作るかもしれない。
立憲民主党が政権を取る可能性はない。取っても議席150─160だろうから過半数はいかない。政権の準備もできていない。
◎想像以上の与党敗北、国民は立民と提携も
<山梨大学大学院総合研究部 藤原真史・准教授(政治学)>
予想以上の与党敗北だ。裏金問題への国民の怒りが底流にあるが、党内野党だった石破茂首相に対する党改革期待が吹き飛んだことも響いた。改革に対する自民党内の抵抗が想像以上に強く改革に内向きとの見方が広がったのだろう。
自民党と立憲民主党の議席差が50以上縮まれば国民民主党は来年夏の参院選を見据え、自民・公明でなく立憲民主党との提携を選択するのではないか。自公が過半数割れの場合に国民民主を連立に加えるハードルは高くなるかもしれない。
政界が流動的となり防衛増税など増税を伴う経済政策は難しくなる。円安けん制のための日銀による利上げなども強い政権でないと難しいので難しいのではないか。
◎石破氏退陣なら後任は高市・林氏など、国民・参政・保守党と協力か
<政治評論家 田村重信氏(元自民党政調会長室長)>
民放各社の見通しでは自公の与党で過半数を割り込むとの見通しが多い。それを前提とする場合、まず石破茂首相が退陣するかどうかが焦点。
各社の開票予測で自民党が比較第一党を維持しており、自民がすぐに野党になることはない。今の野党は1993年の細川護熙政権のように野党大連立を仕掛ける体制をとっていない。
石破氏が辞任判断する場合は、両院議員総会による簡易方式の総裁選で新たな総裁を選ぶことになる。候補としては9月の自民党総裁選で石破さんと争った高市早苗前経済安保相や林芳正官房長官、加藤勝信財務相などが想定されるだろう。
そのうえで、自公としては過半数議席獲得のため国民民主や参政党、保守党などに協力を求めるのが現実的な政権運営だろう。
与党大敗の要因としてはやはり政治とカネの問題。非公認議員への2000万円支給問題について、石破首相は発言し過ぎず、コメントは幹事長に一任するなどの対応がよかったのではないか。
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