
2023年9月20日、都内で撮影。 REUTERS/Issei Kato
[東京 18日 ロイター] - 18日にヤマ場の集中回答日を迎えた今年の春季労使交渉(春闘)では、労組要求に対して満額回答が相次いだ。トランプ関税の影響が懸念された自動車業界もトヨタ自動車(7203.T)などが満額で応じ、賃上げの強いモメンタムが確認された。中東情勢の緊迫化への懸念が残る中、今後は大手の勢いが中小に波及するかが焦点となる。
トヨタの満額回答は6年連続。労組の要求は賃上げ(ベア等)で月額最大2万1580円、年間一時金は7.3カ月分だったが、組合の要求通りとした。同社の自社メディアは、佐藤恒治社長の「私たちの頑張りは自動車産業を、そして日本をもっと元気にすることにつながっている。今回の回答には、こうした想いを込めた」とのコメントを紹介した。
自動車や電機などの産業別労働組合で構成する金属労協(JCM)は同日、午後0時半時点での回答額の平均が1万5450円(5.1%)になったと発表。会見した金子晃浩議長(自動車総連会長)は「物価上昇を大きく上回る水準の回答となり、高く評価している」と述べた。
木原稔官房長官も同日午後の記者会見で、今年の春闘は「高い水準で回答している動きがある」と評価。その上で「今の力強い動きが地方の中小企業や非正規雇用労働者にも波及していくことを期待する」と述べた。
<人手不足・実質賃金プラス化へ対応>
人手不足が続く中、企業側は人材確保の必要性から賃上げに前向きな姿勢を示している。実質賃金をプラス転換させ、生活実感を改善させたいのは労使に共通する課題だ。社員の士気向上の狙いもあり、今年も集中回答日を待たずに相次いで満額回答が発表された。
自動車業界では、マツダ(7261.T)、三菱自動車工業(7211.T)、ヤマハ発動機(7272.T)などが組合要求に満額で応じたほか、業績不振の日産自動車(7201.T)も定期昇給分とベースアップ(ベア)分を合わせて月1万円の要求に満額回答した。
非鉄金属では、三井金属(5706.T)やJX金属(5016.T)が組合要求を上回る賃上げを回答。流通ではイオン(8267.T)傘下のイオンリテール、外食ではすかいらーくホルディングス(3197.T)、食品では味の素(2802.T)、サッポロビール、Umios(旧マルハニチロ)(1333.T)などが満額回答した。
<中東情勢に懸念も>
25年の賃上げ率は連合の最終集計で5.25%と34年ぶりの高水準だったが、みずほリサーチ&テクノロジーズの服部直樹チーフ日本経済エコノミストは、26年も最終的に前年並みの高水準で着地できると予想する。
もっとも、全雇用者の約7割を占める中小企業に賃上げが波及するかは予断を許さない。一般的に大企業と中小企業では賃上げ余力に差がある。
日本商工会議所の小林健会頭は、集中回答日に寄せたコメントで「多くの中小・小規模事業者は依然として業績の改善を伴わない防衛的賃上げを余儀なくされており、昨今の国際情勢の不安定化による影響も懸念される」と指摘。企業経営者の不安心理払しょくと、持続的な賃上げ実現に向けた環境整備に取り組むよう政府に注文した。
賃上げの持続性は、金融政策の観点からも重要な論点だ。日銀は物価上昇を伴う持続的な賃上げの実現を政策判断の重要な材料と位置付けており、春闘の賃上げモメンタム維持は追加利上げの追い風となり得る。ただ、中東情勢の緊迫化による資源高が物価を押し上げれば、コストプッシュ型インフレの再燃につながる可能性もあり、政策判断は一段と難しくなる。
みずほリサーチの服部氏は、日銀は足元の不確実性の高まりを理由に18─19日の金融政策決定会合では利上げを見送る公算が大きいと指摘。メインシナリオは6月の利上げだが、「資源高が基調インフレに影響しオーバーシュートする兆候があると日銀が判断した場合は、前倒しされる可能性がある」との見方を示す。
※〔情報BOX〕主要企業労組の賃上げ妥結額一覧
杉山健太郎 取材協力:清水律子、白木真紀、小川悠介 編集:田中志保
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