FRB議長発言、慎重な米利上げなお適切:識者はこうみる

ロイター編集
FRB議長発言、慎重な米利上げなお適切:識者はこうみる
 3月30日、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は29日、米経済に対する海外リスクを踏まえると足元のインフレ加速が持続するかまだ定かではないとし、利上げを慎重に進めることが依然適切との認識を示した。写真はワシントンで16日撮影(2016年 ロイター/Kevin Lamarque)
[東京 30日 ロイター] - イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は、米経済に対する海外リスクを踏まえると足元のインフレ加速が持続するかまだ定かではないとし、利上げを慎重に進めることが依然適切との認識を示した。
市場関係者のコメントは以下の通り。
<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>
イエレンFRB議長は前日の講演で、これまでと変わらない利上げに慎重な姿勢を維持した。
しかし、前週の度重なる地区連銀総裁らのタカ派発言を受けて、早期利上げの思惑が広がっていた為替市場は失望のドル売りで反応する一方で、米株式市場は、利上げ先延ばしによる流動性確保とこのドル安による米企業業績の改善期待から、株買いで反応した。
ただ、イエレン議長は、リスク要因として引き続き中国経済と原油価格動向を挙げており、こうした外部要因次第ではドル安を通じた株高の経路も確立されたものではなく、その脆弱さが露呈する可能性があるとみている。
長期的なドル/円のトレンドは、2002年第1・四半期の135.20円と、2007年第2・四半期の124.14円を結んだ線が110円付近にレジスタンスがあることを示唆していた。
ドルは、2014年10月下旬に同水準近傍で推移していたが、同年10月31日に実施された量的緩和第2弾(QE2)を受けて110円を完全にブレークし、2015年6月の125.86円までの相場を形成した。
その背景には日米欧の非伝統的な金融緩和策への信頼があったわけだが、現在はそこが揺らぎ始めている。目下、ドルはQE2後の上振れ分を返上する過程にあり、新年度入り後に110円割れを試す可能性があるとみている。
<みずほ証券・シニア債券ストラテジスト 丹治倫敦氏>
イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は講演で、利上げに慎重姿勢を示した。前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)での政策金利見通しが引き下げられたこともあり、市場は素直にハト派の内容と受け止めたのだろう。
イエレン議長は海外リスクに言及している。米国では、原油価格の反発を受けて期待インフレがやや持ち直しているが、賃金が上がらないことから、構造的にインフレが生じにくくなっている。無理して金融引き締めを行う必要性が、低下しているのかもしれない。少なくとも、断続的な利上げに踏み切る状況でもないのだろう。
今回の講演を受けて4月利上げの可能性が低くなった。6月の可能性は捨てきれないが、新興国など海外経済動向や市場動向次第だろう。年内はあと1回の利上げができればいい。こうした状況を踏まえると、長い目でみれば、米金利は上がりにくい状況が続くのではないか。
<岡三証券 シニアストラテジスト 小川佳紀氏>
イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の講演内容は驚きのある内容ではなかったが、前週にはFRB幹部から4月の米利上げをほのめかす発言が相次いでいたため、思ったよりもハト派と印象付けた。これを受け、フェデラルファンド(FF)金利先物は4月の米利上げ確率が低下した。年明け以降の米経済指標をみると、1月が悪かったが、2月は改善と方向感がみえにくい。3月の指標で、1月がイレギュラーだったのか、2月の改善基調が続くのかを見極め、次の利上げ時期を探る段階になるだろう。
日本株にとっては世界的な株高基調はプラスだが、ドル安/円高が重しとなる。もっとも海外投資家からみれば円の上昇はドル建て日経平均を支えるため、悪い話ではない。年度末を通過し、国内勢による期末特有の買いが細るなかで、これまで売り越し基調が続いていた海外勢の日本株に対する投資スタンスの変化が注目される。

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