[ワシントン 11日 ロイター] - トランプ米大統領は11日、米中が「第1段階」の通商合意に達したと発表し、前日から2日間の日程で行われていた両国の閣僚級通商協議が部分合意に達したことを明らかにした。
今回の「第1段階」では中国による米農産品の大規模購入のほか、一部の知的財産権、為替、金融サービスの問題などについて合意。さらに米国は15日に予定していた対中制裁関税引き上げを見送る。
トランプ大統領は中国の劉鶴副首相との会談後、両国が基本合意し、貿易戦争の終結に近づいていると言明。今回の合意の文書化には最長5週間の時間を要する見通しで、チリで11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で中国の習近平国家主席と署名する可能性があると述べた。
今回の合意は両国にとって素晴らしいとし、とりわけ為替問題を巡る合意は多大な恩恵をもたらすとの認識を示した。一部の知的財産権や技術移転を巡る問題については進展があったものの、「第2段階」でさらに踏み込む必要があるとした。
第1段階の合意に署名後、第2段階の交渉を開始し、その後「第3段階」の合意が続く可能性があると述べた。
今回の合意が今後数週間で白紙に戻るとは考えていないとしつつも、可能性はあるとした。
ムニューシン米財務長官は、金融サービスについてはほぼ全面的な合意を得られたほか、為替相場の透明性向上についても合意したと語った。中国に対する為替操作国の認定を撤回するかどうかについては、今後精査するとした。
また、今回の合意内容が文書化されるまで「米国は署名しない」とも述べた。
トランプ大統領は「米中間には多くの摩擦があったが、今は親密だ」と述べた。
一方の劉副首相は「多くの分野で大きな前進があり、うれしく思う。今後も取り組みを継続する」と述べるにとどめた。
中国国営の新華社は、両国が「最終合意に向けて努力することで一致した」と報じた。
また、人民日報は12日の社説(電子版)で、今回の協議は建設的かつ率直で、効率的だったとした上で、双方は問題解決に向けて動いているものの、「中国側に恣意(しい)的な圧力をかけることで問題を解決することはできない」とくぎを刺した。
トランプ大統領は、中国が最大500億ドル分の米農産品購入に合意したとして評価したが、数千億ドル相当の中国製品に対して発動済みの関税はそのままとなった。
大統領の発表は前進と受け止められているものの、懐疑的な見方も出ている。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、スコット・ケネディー氏は「トランプ大統領が発表したことを合意と呼ぶのが正当化されるかどうか分からない」と指摘。「文書について合意できていないなら、決着していないということに違いない。これは小粒合意ではなく、目に見えない合意だ」と述べた。
ムニューシン長官は、15日に予定されていた対中関税引き上げの延期を確認したものの、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、12月に発動される予定の対中関税については何ら決定されていないと述べた。
ライトハイザー代表はまた、今回の合意では中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の問題には触れていないことを明らかにした。
トランプ大統領は政敵の野党民主党ジョー・バイデン前副大統領については議題に挙げなかったものの、香港情勢を巡っては協議したことを明らかにした。
また、今回の合意に関わらず、米連邦準備理事会(FRB)は利下げを継続すべきとの見方を再表明した。
*中国国営メディアやアナリストのコメントを追加しました。
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